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離婚問題テーマ別解説
~財産分与をどう行うか?

財産分与も我々弁護士に対する離婚相談の中でよくある相談です。
財産分与(民法第768条1項)とは、婚姻中に夫婦で購入した動産・不動産や蓄えた預貯金等を離婚から2年以内に当事者の協議によって分配する手続をいいます。財産分与は離婚協議の際に夫婦の一方が他方に対して請求することが認められ(民法第768条1項)、話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に調停を申立てることができます。財産分与は離婚のほとんどのケースで行われています。

一方、財産分与にあたっては財産分与の対象となる財産の特定に手間がかかることや、住宅ローン等マイナスの財産の取り扱い・分与割合等をめぐって争いが生じやすく、当事務所でも財産分与についてのご相談を頻繁に頂いています。

本記事では財産分与がどのような目的で行われるか、財産分与の対象となる財産と対象にならない財産の違いや、マイナスの財産の取扱い、財産分与割合や財産分与に関わる税金の問題、財産分与手続の流れについて解説します。

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財産分与の種類

財産分与は、一般的には夫婦が協力して築いた財産の分配のために行われます。

これに加えて、妻が専業主婦であった場合や一方に不貞行為や配偶者に対する暴力等の不法行為の事実があった場合、離婚前に別居していた場合等の個々の夫婦間の事情に応じてそれに対する財産的補償あるいは賠償金の意味で財産分与を行うことができます。

分与する財産が同じであっても種類を分ける理由としては、分与する側の意思を表示することに加えて税法上の取扱いが違うことにあります(詳しくは「財産分与と税金」の章で解説します)。

財産分与の種類については、判例では下記1~3の3種類に分類しています(最高裁1971年7月23日判決)。これに加えて、別居期間の婚姻費用の未払い分に充当するために行われる財産分与(下記4)も含まれると考えられます。なお、下記1~4のうち複数の種類の財産分与を行うこともできます。本章ではこれら4種類の財産分与について解説します。

1.清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦の共有財産の分配として行われる財産分与です。これは財産分与の中心となるもので、離婚に伴い財産分与を行う場合には双方の事情を問わずに清算的財産分与を行うことができます。従って、例えば妻が不貞行為を行っていた場合に妻から夫に清算的財産分与請求をすることも認められます。

2.扶養的財産分与

元配偶者の離婚後の生活維持のために行われる財産分与です。元配偶者が専業主婦(夫)であった場合や、扶養の範囲内のパート勤務等で収入が少なかった場合、かつ子供がいる場合等、少なくとも短期間に離婚前と同等の世帯収入を得ることが難しくなるため、生活費を補う意味で財産分与を行うことができます。金銭で支払われるのが通常で、一括して支払うことも可能ですが、一定の期間を定めて定期的に支払われることが多いです。実務では、特別な事情がない限り、扶養的財産分与が認められることはありません。

3.慰謝料的財産分与

一方が不貞行為(配偶者以外の相手と性的関係を持つこと)や暴力行為等、配偶者に対して不法行為を行った事実がある場合に配偶者が受けた精神的苦痛に対する賠償金である慰謝料(民法第710条)と併せて、または慰謝料に充当するために行う財産分与です。実務では、単に慰謝料として請求するのが通常ですので、慰謝料的財産分与として主張することはほとんどありません。

4.過去の婚姻費用の清算としての財産分与:生活費の未払い分の清算のために行われる

夫婦が離婚前に別居していた期間があった場合には、収入状況によって別居期間の生活費や(子供を連れて別居した場合の)養育費を「婚姻費用」として配偶者に請求することができます。これは、夫婦が婚姻期間中に資産・収入その他の事情に応じて「婚姻から生じる費用」を分担する義務を負っていることに基づきます(民法第760条)。別居期間中の生活費・養育費が支払われていなかった場合、その清算の意味で財産分与を行うことができます。

財産分与の対象となる財産

財産分与の対象となる財産は夫婦が婚姻中に協力して形成・維持していた財産(共有財産)です。他方、共有財産とみなされず夫婦の一方に専属する財産(特有財産)は財産分与の対象となりません。

財産分与にあたっては、共有財産と特有財産の識別を行う必要があります。本章では共有財産と特有財産の識別や、住宅ローン等マイナスの財産が財産分与の対象となるか等について解説します。

1.対象となる財産とならない財産

(1)対象となる財産:共有財産

①婚姻期間中の双方の仕事の収入は共有財産

共有財産とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持していた財産です。必ずしも共有名義であることは必要なく、夫または妻の名義であってもその財産の形成に配偶者が寄与していると認められるものは共有財産とみなされます(これを共有名義の財産と区別するために「実質的共有財産」と呼ぶ場合があります)。

例えば、夫が企業の正社員である場合に夫の給料は夫名義の預貯金債権となりますが、夫がフルタイムで働き、給料の支払いを受けることができるのは家庭での妻の貢献があるためと考えることができます。従って夫名義の預貯金の形であっても共有財産とみなされ、給料が入金される口座残高分が財産分与の対象となります。婚姻中に妻が仕事で得た収入についても同様に共有財産とみなされます。 また、民法第762条2項は「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」と規定しています。この例として子供が未成年者である間の子供名義の預貯金等があります。

②退職金について

ⅰ 将来支払われる予定の退職金については

問題になるのは、将来すなわち離婚後何年もしてから支払われる予定となっている退職金の扱いです。まず、将来支払われる退職金を財産分与の対象とすることができるかについて、東京高裁1998年3月13日決定は「支給される高度の蓋然性があれば」財産分与の対象となるとしています。仮に、対象となる場合であっても、将来の退職金は、離婚後(離婚前に別居していた場合はその期間も含めて)の別居期間を経て支給されるため、財産分与の対象となるのは同居期間に対応する金額のみとなります(東京高裁2010年6月23日審判・東京地裁1999年9月3日判決)。

ⅱ 既払いの退職金について

これに対し、退職金が既に支払われている場合は、現存する残高分が共有財産として財産分与の対象となります(ただし、離婚前に別居期間があった場合はその期間を除いた同居期間のみに相当する割合を共有財産とした審判例もあります:横浜家裁2001年12月16日審判)。

③その他

その他として共有財産とみなされるのは、婚姻中に購入した一戸建て住宅またはマンション等の不動産、自動車・テレビ・冷蔵庫・パソコン等です。

(2)対象とならない財産:特有財産

これに対して、民法第762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産はその特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と規定しています。特有財産については財産分与の対象となりません。

特有財産に該当する財産は、まず夫婦それぞれが婚姻前に得た財産です。これには仕事の給料や報酬ほか、相続や贈与等により無償で得た財産、及び購入した動産・不動産すべてが含まれます(上記の「婚姻前から有する財産」にあたります)。

また、婚姻後であっても相続・贈与等により無償で取得した財産については特有財産となり、財産分与の対象になりません。これについては誤解している方が多いので特に注意が必要です。当事務所でも「最近妻が相続で財産を得たのでこれを分けるべきではないか」という質問を頂いたことがあります。

なお、共有財産に含まれるのか特有財産となるのか識別が難しいものの1つに同一名義・同一口座の預貯金があります。例えば婚姻の時点でその口座の残高が一定程度あった場合、その後の給料等の入金と生活費等の引出しとが頻繁に行われる中で、婚姻中に購入した物がどこまで婚姻前の預貯金分から支払ったものといえるかがわからなくなるためです。 婚姻期間が短い場合は婚姻前の残高を特定できる余地がありますが、現在の残高については原則として共有財産とみなされると考えた方がよいでしょう。

(3)財産の識別に困った場合は弁護士に相談を

上述のように、夫婦共有名義の財産については共有財産とみなすことが容易である一方、それぞれの名義の財産についてはしばしば識別が困難になることがあります。また、そもそも夫婦の一方または双方が共有財産と特有財産の区別を知らないという場合もあります。

財産分与にあたって、ご自身が相続や贈与によって取得した財産の分配を要求されたり、あるいは配偶者名義の個別の財産の分配ができるか否かで迷ったり争いが起きたような場合は離婚問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

2.マイナスの共有財産は財産分与(分割)の対象となるか

(1)カードローン等個々の借金は分割の対象となるか

①マイナスの財産の「分割」は認められない

財産分与を行うにあたって、不安になることの1つとして「財産分与割合は2分の1というから、相手の借金も半分負わされるのではないか」ということがあると思います。これについては、双方の合意があれば収入が多い方が借金の残高のうち一定割合を負担する等の取り決めをすることは可能です。

しかし、話し合いがまとまらずに家庭裁判所が関与する審判・訴訟に進んだ場合、裁判所は離婚に伴う「マイナスの財産の清算義務」すなわち財産分与における債務の分割は認めていません。従って、婚姻期間中に借り入れた金銭やクレジットカードの分割払い、自動車ローン等の残額(以下「債務」と表記)は、それが結婚生活に必要なものであっても双方が分担するという取り決めは認められないことになります。代わりに、以下のように「その債務をプラスの財産から控除する(差引く)対象とする」という意味で「考慮する」という扱いになります。

②婚姻期間中に結婚生活に必要な借金をした場合は考慮される

まず、それぞれが婚姻前に自己名義で負担した債務は考慮されません。 婚姻期間中の借金については、家庭生活に必要なものとみなすことができる場合には金額が考慮されます。例としては子供の教育ローン、自動車ローン、生活費に充てるためのカードローン借入れ等です。

一方の名義で、個人的な趣味やギャンブル等のために借金をした場合は財産分与の考慮対象外となります。マイナスの財産の中でも特に問題が生じやすい住宅ローンについては下記のような取扱いとなります。

(2)住宅ローンが残っている一戸建てやマンションの取扱い

この問題については、その住宅の現在の価値(その時点で売却した場合の査定価格)と現時点でのローン残額との関係によって取扱いが異なります。

①住宅の価値がローン残額を上回る場合(アンダーローン状態)

例えば、現時点で住宅を売却した場合の査定価格が3,000万円で、住宅ローンの残額が1,000万円だったとします。この場合は住宅の価値がローン残額を上回るので、自宅を売却してローンを返済すれば2,000万円の現金が残ります。とすれば住宅には現在2,000万円分の価値があることになるので、あとはプラスの財産分与として合意した割合で分配することになります。

この点、(a)住宅を売却する場合は売却によって得た現金を分配することになるので預貯金を分配する場合とさほど変わりません。他方、(b)一方が住宅に住み続ける場合、言い換えると住宅ローンが残った住宅を財産分与する場合にはその取扱いがやや難しくなります。

例えばこの例で分与割合を2分の1と定めて夫が住宅から出ていき、住宅ローン1,000万円が残った状態で妻が引き続き住むとすれば、妻は住宅の価値2,000万円の半分の1,000万円を夫に支払い、さらにローンを負担し続けることになります。この夫に支払う分の1,000万円がその時点で用意できない場合は分割払いにして、その旨を協議書に記載した上で協議書を公正証書として作成する必要があります。

なお、住宅ローンは名義人がその住宅に居住することが契約条件となっています。共有名義であれば問題ないのですが、例えば名義人が夫である場合に離婚して妻だけが住むことは契約違反となるので注意が必要です。

②住宅の価値がローン残額を下回る場合(オーバーローン状態)

例えば、現時点で住宅を売却した場合の査定価格が2,000万円で、住宅ローンの残額が2,300万円だったとします。この場合、現時点で売却してもローン返済に全て充てなければならず、さらに300万円のローンが残ることになります。

オーバーローン状態では住宅を売却してもローンが残るため、住宅を財産分与の対象となる「財産」と考えることはできません。

ローンの残額については前述のように分割が認められないので、名義人と保証人の債務がそのまま残ります。仮に配偶者が保証人/連帯保証人になっている場合はローン契約の債権者である銀行の承諾があれば、(a)別の保証人/連帯保証人を立てる(交代)または (b)残額のうち一定額を支払う のいずれかの方法により義務を免れる(保証人を抜ける)ことができます。

ただし、ローンを既に滞納している等の理由により銀行が保証人交代等を認めない場合は、破産手続等の方策を考える必要があります。

③離婚の際に住宅ローンが残っている場合の方策については弁護士に相談を

住宅ローンが残った状態で離婚することになった時、特にオーバーローン状態、中でも配偶者が保証人や連帯保証人になっているような場合には争いが生じやすくなります。

まず、住宅の査定額によって当事者の負担が大きく変わるので、財産分与の対象に自宅を含めるか否かを決める段階から離婚問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

財産分与の割合

財産分与の割合については、夫婦間のプラスの財産とマイナスの財産を合算控除した価額の2分の1が原則です。つまり、割合をめぐって双方が合意できなければ、裁判所は2分の1と定めることになります(2分の1ルール)。これは、分与を受ける側の資産・収入状況にかかわらず、婚姻期間中の財産形成には夫婦の双方が寄与しているという考え方に基づいています。

ただし、個々の事情によっては2分の1に分けるのが公平でない場合もあります。 本章では、2分の1ルールの原則が適用できる場合と例外的な場合について解説します。

1.2分の1ルールが適用できる場合

分与を受ける側の資産・収入状況にかかわらず、大多数の場合には2分の1ルールを適用することができます。以前は妻が専業主婦であった場合の財産分与割合を2分の1未満にする判例もありましたが、現在では専業主婦も夫婦の財産形成への貢献度が夫に劣るものではないという考え方のもとに分与割合を2分の1に定めるのが妥当とされています。

2 2分の1ルールを修正する必要がある場合

夫婦の間に、財産形成の寄与度の著しい偏りがあると考えられる場合には2分の1ルールを修正することが妥当とされます。

(1)配偶者の著しい浪費の事実があった場合

夫婦の一方が共有財産を浪費したような場合、裁判所の審判や判決では浪費した側に対する財産分与割合を2分の1未満にすることがあります。この点、水戸家裁2016年3月の判決は、夫の年収900~1,500万円程度、妻の年収830万円(ただし資産が1億5000万円程度)で夫に多額の借金があった一方妻の家事育児の負担が大きかったという事例で、2分の1ルールを適用すると妻に酷であるとして財産分与割合を夫3割、妻7割と定めました。

(2)財産形成に特有財産が貢献した場合

これは、夫婦共有名義の財産を得る上で一方の独身時代からの貯金や、一方が相続で得た財産を充てたような場合です。この点、東京高裁1995年4月27日判決は、夫婦共有名義のゴルフクラブ会員権を購入する際に、夫の特有財産から支出していたという事情があった場合に財産分与の割合を夫64%、妻36%と判示しています。

(3)一方の特別な才能によって財産形成した場合

一方が億単位の年収を稼ぐプロスポーツ選手であったり、一部上場企業や医療法人・学校法人等の経営者であるような場合で、財産形成が婚姻前からのその個人の才能や努力によるところが大きい場合です。 この点、大阪高裁2014年3月13日判決は、夫が開業医として医療法人を経営していた事例で、医療法人の持ち分を純資産価額の7割とした上で、財産分与の割合を夫6割、妻4割と定めました。

財産分与と税金

財産分与を行うにあたって「贈与税がかかるのではないか」あるいは「どの種類の財産分与に対して課税されるのか」ということも気になると思います。

本章では、財産を与える側と分与を受ける側それぞれが知っておくべき税金の問題について解説します。

1.財産を与える側

財産分与として金銭を支払う場合には税金はかかりません。ただし、所有する不動産・高額の動産を売却してすべて換金して支払う等、金銭による分与額が不相当に過大であるとみなされた場合には過大とみなされた分につき贈与として扱われる可能性があります。分与を受けた側が贈与税を課された場合、これを不当として下記の不動産・動産の譲渡所得税を免れた分と贈与税分を損害賠償請求される可能性もあります。

不動産を財産分与する場合、所得税法上の「資産」となるため、譲渡時の価額がその不動産を取得した時の価額を上回る場合には所得税法第33条1項の「譲渡所得」に該当し、増加益に対して譲渡所得税がかかります。なお、不動産を財産分与する場合は居住用資産の譲渡に関する3,000万円控除、婚姻期間が20年を超える夫婦間の贈与に関する2,000万円控除の制度があります。

その他、株式その他の有価証券等、所得税法上の「資産」となる財産を分与する場合には不動産の場合と同様、取得時よりも譲渡時の価値が上がっている場合のみ「譲渡所得」に該当するのでその増加益に対して譲渡所得税が課税されます。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」「譲渡所得の対象となる資産と課税方法

2.財産を受ける側

まず、財産分与を受ける側には原則として贈与税の支払義務はありません。対象財産は贈与(民法第549条)を受けたものではなく、離婚に伴う財産分与請求権(民法第768条1項)に基づき給付を受けたものであるためです。

※参照:国税庁「離婚して財産をもらったとき

また、慰謝料的財産分与と婚姻費用清算的財産分与の養育費相当分に対しては非課税となります。ただし不相当に過大とみなされた場合は過大な分につき贈与とみなされる可能性があります。

不動産の分与を受ける場合は不動産取得税(地方税法第73条)・登録免許税(登録免許税法第2条)がかかります。

財産分与の流れ

それでは、財産分与は具体的にどのように行えばよいでしょうか。本章では、財産分与を行うための手続の流れについて解説します。

1 財産分与事項を含む協議書を作成する

(1)離婚協議で財産分与に関する取り決めを行い協議書に詳細を記載する

①共有財産の特定を行う

まず、夫婦間で財産分与について話し合います。 事前に、共有財産と特有財産を識別してから共有財産の中でプラスの財産とマイナスの財産をリストアップして双方で確認して下さい。その際、共有財産及び特有財産の存在を証明する書類の収集も必要になります。例として以下のようなものがあります:

・双方の預貯金通帳またはそのコピー
・双方の所得を証明する書類(給与明細・確定申告書類等)
・不動産登記簿(所有不動産がある場合)
・生命保険等の任意保険の保険証書
・株式その他の投資をしている場合は証券口座の明細
・婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録がわかる書類
・マイナスの財産についてはそれぞれの契約書、直近の利用明細等現在の残額がわかる書類

これらから共有財産を特定し、住宅ローン等のマイナスの財産を控除した上で、分与する財産とその金額・価額を協議書に記載します。

協議書自体には法的な強制力が生じないため、財産分与が実行されなかった場合に強制執行を可能にするためには執行認諾文言付き公正証書として公証役場で協議書を作成する必要があります。

②いつの時点での財産額を基準とすべきか:別居中に共有財産を使い込まれた場合

離婚協議を行う時点で別居していた場合、別居中に配偶者が預貯金等の共有財産を浪費してしまうことがよくあります。ここで、財産分与の対象となる「共有財産」はいつの時点の財産を基準にするかが問題となります。この点、夫婦で協力して築いた財産を分配するという財産分与の目的に照らすと夫婦の扶助協力関係が消滅した時、すなわち別居を始めた時点となります。この時点での預金残高等の財産状況がわかれば、別居後に共有財産が減少した場合であってもそれを基準とした財産分与を請求することができます。

(2)協議が夫婦間でまとまらなかった場合は離婚調停または財産分与請求調停を申し立てる

財産分与及び、その他の協議事項(子供がいる場合の親権者の定め・面会交流・養育費等)について合意できなかった場合は、離婚を求める側が家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停[離婚])を申し立てます。財産分与についてのみ合意に至らなかった場合は財産分与請求調停を申し立てることもできます。

(3)調停不成立の場合は審判または裁判で裁判官の決定を受ける

調停では双方の主張に基づき調停委員が財産分与(離婚調停ではこれを含めた協議事項全て)に関する調停案を作成します。双方が合意できれば調停は成立します。調停案に合意できなかった場合、調停は不成立となります。このうち、裁判官の判断により審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行した場合は裁判官が職権で財産分与についての定めを行います。

審判での決定事項(審判事項)を当事者が受領してから2週間以内に当事者が異議申立てを行わなかった場合は審判事項が確定します(家事事件手続法第287条)。ただし当事者が2週間以内に異議申立てを行った場合は審判事項が無効になります(家事事件手続法第286条5項)。

審判事項が無効になった場合、または審判手続が行われなかった場合は家裁に離婚の訴え(民法第770条1項)、訴訟で財産分与請求することになります。

調停調書、審判証明書、裁判の判決正本及び和解調書には強制力が生じます(家事事件手続法第268条1項・第287条・民事訴訟法第115条1項・第267条・民事執行法第22条1号・7号)。

2.離婚時に財産分与の取り決めを行っていなかった場合

(1)元配偶者と協議を行い財産分与の取り決めを行う

離婚時に財産分与の協議を行っていなかった場合、離婚後に元配偶者が協議に応じれば新たに財産分与の協議を行うことができます。なお、協議自体は離婚後2年以上経過していても行うことができますが、2年以上経過していると協議が成立しなかった場合に調停を申し立てることができなくなります。

(2)元配偶者との話し合いがまとまらなかった場合は家庭裁判所に財産分与調停を申し立てる

財産分与について相手が協議に応じなかったり話し合いがまとまらなかったりした場合は、離婚成立日から2年以内であれば家裁に財産分与調停を申し立てることができます。なお、離婚成立日とは、協議離婚の場合は役所が離婚届を受理した日(民法第765条)を指します。

3.財産の分配を行う

離婚あるいは財産分与についての協議が成立したら、協議書に従って預貯金の分配や不動産・動産の売却あるいは譲渡を行います。不動産・動産を譲渡した場合には登記及び登録・名義変更等の手続を行う必要があります。

まとめ

上述のように、離婚に伴う財産分与にあたってはしばしば手間のかかる作業や手続が必要となり、また争いが起こりやすい状況になります。

しかし、面倒だからといって財産分与の取り決めを行わずに協議離婚してしまうと、2年後には調停申立てもできなくなるので、本来分与を受けることが可能だった財産の請求が事実上困難になります。

この点、離婚問題に強い弁護士に相談すれば、経験と知識に基づいて共有財産やマイナスの共有財産の特定を迅速に行うことができます。また、財産分与を含めた協議書の作成及び公証役場での手続、執行認諾文言付き公正証書や調停調書が存在しているのに財産分与に不履行があった場合の強制執行手続等についても代理することが可能です。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が離婚の専門家として、財産分与に関係するあらゆる悩みに懇切丁寧にお答えします。また、当事務所では税理士や司法書士が在籍しているので、当事務所を窓口として税金や不動産登記等についてそれぞれの専門家によるサポートも受けることができます。

財産分与について疑問やお困りのことがありましたらぜひ、当事務所の30分無料法律相談をご利用下さい。

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